Freedom と Liberty の違い

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Land of the Free 自由の地

コロナウイルスの感染拡大防止のために自宅待機令が長引く中、経済活動の再開を求めるデモが各地で起きています。
失業者数は急増し、多くのビジネスが生き残れるかどうか不安をかかえているのは事実ですが、” Liberate ( 解放せよ )”と訴えるデモ参加者の中には、マスクなしのうえ社会的距離も取っていない人がたくさん見られます。

ニュースを見ていると、デモ参加者の多くが、アメリカ独立戦争時代の名言をスローガンとしてかかげています。例をあげると、

Give me liberty, or give me death! Patrick Henry -「我に自由を与えよ、さもなくば死を」 独立戦争時代の愛国者パトリック・ヘンリーの言葉 

Live free or die John Stark -「自由に生きるか、さもなくば死を」 独立戦争時代の軍人ジョン・スタークの言葉  ニューハンプシャー州のモットーとして、ニューハンプシャー州の車のナンバープレートにも書かれています。

Do not tread on me ー 「自治の自由を踏みにじるな」 独立戦争の時に、ジョージ・ワシントン率いる植民地軍が使った旗に書かれた言葉で、現在も海軍などが使用。ガラガラヘビは当時のアメリカ植民地を表しています。tread on で「踏みつける」なので、ヘビが「オレを踏みつけるなよ」つまり、植民地の持つ自治の自由を踏みにじるとただでは済まないぞ、と言うおどしの言葉です。ガラガラヘビは、踏みつけられたら、かならず攻撃してくる習性を持つので、自治の自由を脅かそうとする相手への警告の意味を込めて使われています。

これらの言葉や旗はすべて、自由のためには死も恐れずに戦う、という独立戦争時代の愛国心に満ちたものです。

自宅待機令が出ていても、もちろん市民には言論、集会、出版の自由が保障されていますが、マスクもせず大勢がひしめき合ってのデモには、疑問の声もあがっています。これがアメリカの誇る” Land of the Free ” の姿なのかと感じずにはいられません。

アメリカ国歌『星条旗 The Star-Spangled Banner』にうたわれているように、アメリカは ” Land of the free ” 「自由の地」であることを誇りにしてきました。しかし、市民の生命を守るための自宅待機令は、自由の権利を奪っているのでしょうか。

独立戦争時代の軍人かつ政治家、ガズデンがデザインしたので、ガズデンフラッグと呼ばれています

Freedomと Liberty の違い

自由」をあらわす単語には、Freedom Libertyがあります。一般的に「自由」をあらわす時によく使われるのはFreedomの方でしょう。FreedomとLibertyはsynonym(同意語)なので、どちらを使ってもいい場合もありますが、一方で、微妙なニュアンスの違いがあります。

英語の定義は、

Freedom:the power or right to act, speak, or think as one wants without hindrance or restraint
    :妨害や制限を受けること無く、人々が望むように行動したり、発言したり、考えたりすることができる権力や権利

Liberty:the state of being free within society from oppressive restrictions imposed by authority on one’s way of life, behavior, or political views
   :社会において、 人々の生き方・言動・政治観に対して、権力によって押し付けられた抑圧的制限から解放れている状態

となっています。簡単に言うと、
Freedomは、生まれ持った権利として、内面の意思に基づいて考え、発言し、行動することができる自由、
Libertyは、権力など外部からの束縛から解放されている自由
と考えるとわかりやすいかもしれません。

Freedom

強制収容所でのFreedom

ユダヤ人の心理学者 ビクトール・フランクル ( Viktor Frankl ) は、1942年から1944年まで、ナチスによる強制収容所での体験をつづった『夜と霧 』 ( Man’s Search For Meaning )を発表しました。彼は、このように記しています。

“Everything can be taken from a man but one thing: the last of the human freedoms – to choose one’s attitude in any given set of circumstances, to choose one’s own way .”
『人間からありとあらゆる全てのものを奪うことはできるが、たったひとつ、人間の持つ最後の自由 ーあたえられた環境でどのような態度を取るか、そしてどのような道を選ぶかーこの最後の自由だけは奪うことができない。」

フランケルは、強制収容所で常に死と向き合い、身体的な自由が一切ない状況の中にありながら、心の自由は失いませんでした。彼は、どのような状況にあっても、誰にも奪われることのない内面の自由を”Freedom””と表しています。

Bill of Rights 「権利章典」

トーマス・ジェファーソンジェームス・マディソンらのFounding Fathers ( 建国の父 )は、1788年に承認されたアメリカ合衆国憲法に、国民の権利を政府から守るために10か条の修正条項を追加しました。この10か条をBill of Rights 「権利章典」といいます。このBill of Rights 「権利章典」の第1条が保証しているのは、ほかでもない”Freedom“です。

Freedom of religion 宗教の自由
Freedom of speech  言論の自由
Freedom of the press  出版の自由
Freedom of assembly  集会の自由
Freedom of petition  請願の自由

日本やアメリカなどの民主主義国家は、基本的人権を守り、国民の自由を保障しています。これらの自由は、保証されていると同時に、常に責任をともなうものです。言論の自由が守られているからといって、人の自由を奪ったり、危険にさらすようなことは「言論の自由」とは認められません。

Liberty

“Give me liberty, or give me death! “

我に自由を与えよ、さもなくば死を。

これは、アメリカ独立戦争の始まりにあたって、植民地の人々を鼓舞したパトリック・ヘンリー ( Patrick Henry )の演説の結びの言葉で、歴史に残る名文句です。もちろん、アメリカの歴史の教科書にも載っていて、アメリカ人ならだれでも知っています。

当時の植民地は、本国イギリスから課せられた税金に苦しみ、さらに、植民地からは国会議員を選出することも認められていませんでした。何とかして、大国イギリスとの戦争をさけようと交渉を試みますが決裂、自由を手に入れるには戦争は避けられない状況へと突入していきます。そんな時に、パトリック・ヘンリーの演説は、熱狂的に受け入れられました。

パトリック・ヘンリーは演説が上手で、“No taxation without representation” 「代表なくして課税なし」という名文句も残しています。植民地代表 (representation )を選ぶこともできず、政治に参加することも許されないのなら、税金だけ取られるのはおかしいと訴えた言葉です。
このように、パトリック・ヘンリーは、イギリスの不当な支配からの自由(Liberty)を熱く訴え続けました。

一方、自宅待機令に反対する人たちは、この名言をもじって
“Give me liberty or give me Covid!”
に変えてしまいました。「我に自由を与えよ、さもなくばコロナを。」自由を奪われるくらいなら、コロナウイルスに感染したほうがましだと訴えているのです。
パンデミックの中、命がけで救命にあたる医療関係者がいる中で、公共の福祉 (Common good) を無視して本当に自由 (Liberty )を勝ち取ることができるのか疑問です。Libertyは、決して人々の安全を脅かすものではないからです。

Life, Liberty and the pursuit of Happiness

アメリカ独立宣言 ( Declaration of Independence ) は、トーマス・ジェファーソンを中心に起草されました。
彼は ” Life, Liberty and the pursuit of Happiness “「生命、自由、および幸福の追求」は ” unalienable Rights “「譲り渡すことのできない権利」であると明記しています。さらに人民の安全と幸福 ( Safety and Happiness ) を実現するための政府を築くことは人民の権利であると断言しました。独立宣言は、アメリカがイギリスの圧政から独立することの正当性を訴え、イギリス国王の支配から解放され、新政府をつくることを宣言したものです。

トーマス・ジェファーソンの” Life, Liberty and the pursuit of Happiness “「生命、自由、および幸福の追求」の観念は、日本国憲法にも取り入れられています。
日本国憲法13条には、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定されています。

アメリカは、独立戦争で多くの犠牲を払ってLibertyを手に入れました。アメリカの誇る Liberty が、市民の安全と幸福を脅かすものであってはならないのです。

コメント

  1. Hiker's Dog より:

    素晴らしい!それ上の言葉が見つかりません。

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